2007年01月04日 22:13
団塊世代の大量退職でシニア観光客が増加する中、車いすなどでも楽しめる「バリアフリー観光」に注目が集まっている。京都市内では高齢者の増加を見据えて施設・サービス改善のため専門チームを設けるホテルや、車いす用遊歩道を設置する寺社など、高齢化時代の観光客獲得に向け、積極的なバリアフリー化を進めている。
京都市内を訪れる観光客の中で、60歳以上の割合は2000年の15・1%(611万人)から05年には17・4%(822万人)へと増加。足腰に不安を抱える高齢者なども増えているとみられている。
その中で、できる限り快適さを提供することで、車いすを必要とする高齢者や障害者のリピーター化を目指すのが、京都市下京区グランヴィアホテル京都(京都市下京区)。04年、ユニバーサルサービス推進チームを結成し、社員が「ハートフルアドバイザー」や「手話検定」など、民間の福祉資格を取得。チームで検討しながら、車いすでも楽しめる観光地のリストアップや、ドアスコープを車いすからでものぞけるように低い所に設置するなどのサービスを提供している。
12月には宿泊施設として唯一、市みやこユニバーサルデザイン奨励賞も受賞。取り組み強化で講師料や改装費など年間約100万円の負担増になるが「だれもが泊まれる安心感が口コミで広がった」(吉野修リーダー)という。計6室のハンディキャップルーム利用数は05年度は04年度比36%増。06年度も前年度超えする見込み。
観光地では、三十三間堂が8月に車いす用遊歩道を境内に設置するなど、各寺社で積極的なバリアフリー化が進む。
一方、11月にバリアフリー京都観光の案内本を出版したユニプラン(中京区)の橋本良郎社長は、飲食店での取り組みが遅れていることをあげる。「食事は旅行の楽しみの一つ。掲載したかったが、安心してお勧めできるお店はまだ少ない」と現状をみる。
飲食店や宿泊施設にバリアフリーが広がらない背景には「資金的な負担に二の足を踏む業者が多い」(市保健福祉総務課)ことがある。営利企業のため公的な補助制度もない。しかし、バリアフリー旅行を扱う夢ツーリストきたみ(中京区)によると、同旅行の扱い件数は06年は01年比25%増の100件となり、「ニーズは確実に高まっている」(北見貴志社長)。ハード面の不備は人手でカバーできる部分も多く、「まず車いすの扱い方などを従業員が学ぶことが必要」と指摘する。