2007年06月25日 22:48
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が揺れている。資金洗浄(マネーロンダリング)の監視不備や横領事件への関与など、昨年12月からわずか半年の間に、内外の金融当局から業務改善命令を5回も食らっているのだ。グループをむしばむ不祥事の嵐。世界最大級の金融グループの内部でいったい、何が起きているのか-。
【不祥事の嵐】
三菱UFJグループの最近の不祥事は、こんな感じだ。
傘下の三菱東京UFJ銀行が、投資信託の不適切販売と、海外業務の法令順守体制の不備で、金融庁から6月11日にそれぞれ業務改善命令を受けた。
特に投信の不適切販売では、顧客の注文とは異なるものを誤って販売し損失が発生したにもかかわらず、損失補(ほ)填(てん)をしないという対応が続出。過去3年間で100件以上の不適切販売が判明した。
2月中旬には、同銀淡路支社(旧UFJ銀の支店)が大阪市の財団法人「飛鳥会」を舞台にした横領事件に関与し、一部業務停止命令。さらに昨年12月には、米金融当局からも、マネーロンダリングの監視体制の不備で業務改善命令を受けた。
「半年間でこんなに行政処分を受けるのは異常だ。組織的に問題があるとみるのが自然だろう」(金融筋)
三菱UFJFGの社長であり、三菱東京UFJ銀の頭取でもある畔柳信雄氏(65)=写真上=の統治能力が問われているともいえそうだ。
【天動説】
一連の不祥事について金融筋は「旧三菱銀から続く、顧客や行政より自分たちが中心という“天動説”が不祥事の根源」と指摘、こう続ける。
「例えば、投信の不適切販売でも、損失を補填(ほてん)することになったら担当者周辺の出世に響くとでも考えたのだろう。明らかに視線は顧客にではなく、行内に向いている」
内向き-。それを象徴するのが、昨年12月に米金融当局からマネーロンダリング監視の不備で受けた改善命令だ。
「マネーロンダリングの監視は、情報がきちんと下(現場)から上がってこないとできない。ところが旧三菱銀には“悪い情報”は出世に響く恐れがあるので上には上げないという悪しき慣習みたいなものがある。さすがの米金融当局も、そうした旧三菱銀の体質にあきれ、行政処分を突き付けた」(在米邦銀筋)
飛鳥会事件のケースでも“らしさ”が出た。金融関係者がいう。
「金融庁の処分が下る前から、行内の処分をどうするかでモメていた。理由は、旧UFJ銀の案件なのに旧三菱銀側も処分される必要があるのか、といったものだった。業務停止にもなりかねない事態だったのに、自分たちの“都合”ばかりを気にかける」
この事件への対応をめぐっては、金融庁も怒り心頭だったという。
「本来ならトップである畔柳社長(旧三菱銀出身)が金融庁を訪ねて釈明すべきなのに、これは旧UFJ銀の案件だからと旧UFJ銀出身の玉越良介氏(三菱UFJFG会長)を寄越した。やれ旧三菱銀だ、やれ旧UFJ銀だというなら、何のための経営統合なんだ」(金融庁関係者)
こうした旧三菱銀Vs旧UFJ銀の覇権争いのほか、最近は「畔柳氏と三木繁光氏=同下=(三菱東京UFJ銀会長)の不仲も伝えられる。どちらも旧三菱銀出身者だから、身内同士でもぶつかり合っているようだ」(金融筋)という。
そんな三菱UFJグループに対して立て続けに行政処分を出した金融庁だが、怒りはまだ収まっていないようだ。
「6月の業務改善命令は、投資家保護を重視した金融商品取引法の施行を9月に控えて一罰百戒的な意味もあるが、(6月の)株主総会の直前に発令したところが今回のミソ。これで株主総会での経営陣の責任追及は相当厳しいものになる。金融庁は『それでも改心しないのなら、まだ材料はある』と含みを持たせたわけだ」(同)
まだ材料はある…とは不気味。ただ、三菱UFJは、就職担当の行員が就職活動に来た女子学生にわいせつ行為をするような金融機関だから、不祥事はまだありそう。トップの畔柳氏ら経営陣は当分、枕を高くして眠れそうにない。
【三菱UFJFGの最近の行政処分】
2006年12月18日 三菱東京UFJ銀行など、米金融当局から資金洗浄監視の不備で改善命令
07年 1月31日 三菱UFJ証券、オーエムシーカード株の不正取引で金融庁から業務改善命令
2月15日 三菱東京UFJ銀、取引先の不正への関与で金融庁から一部業務停止命令
6月11日 同銀、投資信託の不適切販売で金融庁から業務改善命令
同銀、海外業務の法令順守体制の不備で金融庁から業務改善命令